さるのめん
やさしい祖母が嬉々として「最近はどんな仕事したんね」と聞いてきた。正直なところ、これだけの歳の差から生じる私と祖母の感性の差を埋められる自信はなかったけれど、案外一生懸命な姿勢とか気持ちって伝わるもんだから…と自分に言い聞かせ、仕事で描いたイラストが映るスマートフォンを祖母に手渡した。慣れない手つきで大切そうにスマホを抱える祖母は目を凝らしながら言う。「チャ(感嘆詞)!“こんな絵”でお金ば貰いようと!ハェ~…“こんな絵”でぇ…たまげたぁ…“こんな絵”がお金になるっちゃすごかねぇ…ばあちゃんにゃいっちょん分からんごた!…“こんn」たぶん祖母ではない、あれは呪われた老婆だ。
私はくら寿司のカウンター席で、眼前のモニターから「ビッくらポン」の設定をオンにしている。それから大好きな「カニマヨ(軍艦)」を探していると、誰かに肩をつんつんと突かれた。先ほどから右隣の席でメガネを鼻頭まで下げ、テーブルに広げられた大量の書類に目を通しているのかいないのかよく分からないいかにも怪しげな年配の男だ。つっけんどんに「なに?」と応えると、大きめの声で「おォれドナルド・トランプにマンション売ったことあんのよ(溜めの3秒~ドヤと頷きを添えて~)!あとジョォン・レノンね!ジョンの家で一緒に酒のんだことある!さすがにオノ・ヨーコは出てこんかったけどなァー!ヘヘヘッ!」知らん。もう災いである。
私は朝起きるのが非常に苦手だ。時刻は午前7時、その日もいつも通り気づかぬうちに服を脱いでパンツ一丁で寝ている。すると突然玄関のドアがものすごい勢いでドンドンドンと叩かれる。文字通り叩き起こされた私は、二つの意味で腹をかきながら(お上手)パン一で玄関へ向かい戸を開けると、まだ戸が開ききる前からキンキンと近所のおばあさん二人の声が戸を押して入ってくる。そこから二人で長々と喋るので要約すると、ゴミの分別ができていなかったので袋を開けて確認したら(違法である)私宛の書類が出てきたので、おばあさんAは「すぐに注意しに行こう」と提案したが「私は止めたのよ」とおばあさんB。私が間違えていたため注意は真っ当で「ごめんね、やり直してまた出すよ、ありがとう」と言うと、再度おばあさんB「私は本当に止めたのよ、あの子はいつも昼過ぎにしか起きないっていっつもみんなに言っているしこの人にもちゃんと伝えたんだけど今行こう今行こうっていうもんだから」いっつも言わんでいいじゃんよ。
こないだ福岡県早良区は猿田彦神社で購入した魔除けの猿面はインテリアとしてもさることながら(お上手2)魔除けとしても優秀で、こうした魔性のものや災いから今日も私を守ってくれている。
