ネパリーズ・コペルニクス
1543年、天文学者「ニコラウス・コペルニクス」は、かつて誰もが当たり前に肯った天動説(地球を中心に太陽や他惑星が回る地球中心説)を覆す地動説(太陽を中心に他惑星が回る太陽中心説)を唱えた。
「あァたァ絶対ィにベトナム人nだよ!j…じゃなアんでそんなに日本語カタコトォ!?」
会計時、二つ折りの革財布から小銭を取り出す私に対してそう語ったのは、福岡市でラーメン屋を営むベトナム人店主「シンちゃん」である。
外国人に間違われ易い私は、どうやら南西アジアと相性が良いらしく、ネパール人が営む福岡市のディープなカレー屋に通い詰めた結果、晴れて常連客となった(後に近所の商店街にあるスリランカカリー専門店「モナラ」でも常連客となる)。彼らの心にある像や水牛が彫られたアジアンテイストの狭き門を通された私が受けられるサービスは、実に多種多様である。食後に無料で提供してくれるカラフルで細長い粒がまぶされたアイスクリーム・注文した辛さからもう一段階辛くしてくれる余計なホスピタリティ・街で会う度にしてくれるハイタッチ・笑顔で頷きながら渡してくるアルミホイルの塊(大体はじめて見る料理が入っている)。どれも愛あるネパール流のおもてなしだ(多分)。
ある日、いつものようにディスプレイに映る「大勢のインド人が雅な衣装で踊る映像」を眺めながらカレーを待っていると、ネパール人が「サービシュネ。」と言い、何にも形容し得ない「何か」をテーブルにトンと置いた。料理名も分からず、あまりに手がかりがないのでひとまず食べてみると、食感は揚げパンと餅の中間、味はほとんどないが癖になる不思議な食べ物だった。ネパール人に「これなに?」と聞くと、ネパール人は「ホンモノノパン。」と答えた。

私がこれまで食べてきた「パン」が偽物である可能性がでてきた。